【断】卓抜の会見こそ番組に
2007/05/13, 産経新聞 東京朝刊
連休中、日本人としての誇りを覚醒(かくせい)させられるテレビ番組を2本鑑賞した。3月、市川團十郎・海老蔵親子を招いた、パリのオペラ座初の歌舞伎公演が大成功のうちに幕を閉じた。公演前の舞台裏がNHKハイビジョンで、「勧進帳」「口上(これのみフランス語)」「紅葉狩」の全舞台が教育テレビで放映された。
ところで、公演に先立ち、日本外国特派員協会で團十郎・海老蔵親子と、公演に参加した市川段四郎・亀治郎親子の記者会見があった。外国人記者、日本人会員ら約200人が集まり、私もその1人だった。外国人記者の質問に4人が答えるという言葉のやりとりだけの2時間。辛辣な質問にもビシッと答え、かつ会場が揺れるほどの笑いの渦に包んだ。
4人の持ち味も前面にだす。歌舞伎への愛情と自信を軸に、團十郎と段四郎は人間味あふれる自然体で、海老蔵はシニカルなスタイルで、亀治郎は西欧人向きの論理的なスピーチ構成にジョークで笑わすぞとの意気込みだった。市川家の信頼厚い通訳は、各自の持ち味を生かしてエスプリに富んだ英語に訳す。
段四郎は「歌舞伎は阿国の時から最先端のものをとりいれた前衛的な芸術だったようです。今も時代とともに進化する、現代に生きる伝統芸術です」。海外公演でも、そのつど歌舞伎にないものを積極的に学び、とりいれたとの話に、ほう、と感嘆の声が上がった。
「何を考えているのかわからない、ジョークのひとつもいえない日本人」との陰口など絶対いわせない内容だった。インターネット上でこの種の記者会見をみられることもあるが、国民の受信料で経営されるNHKこそ、韓国ドラマの再放送ばかりしていないで、日本文化を学ぶこと大の記者会見を臨場感あふれる形で放映できないものか。(評論家・井口優子)