【断】「日本沈没」の立ち向かい方
2006/08/09, 産経新聞 東京朝刊
小松左京原作、昭和48年に大ヒットした映画のリメイク版「日本沈没」がヒットしている。平成18年版監督の樋口真嗣氏は「『地震が起きたら大変だ』というのが、前作は中心だった。(中略)今作は一歩進んで『立ち向かう』ところを描きたかった」(本紙7月25日付文化面)と話す。その「立ち向かい方」に、暗澹(あんたん)たる気分になったのは私だけであろうか。
「日本沈没」まで1年弱。沈没を避け得るかもしれない奇策は、日本列島を引きずり込もうとしているプレートを切断すること。掘削船で無数の穴を掘り、核弾頭に匹敵する威力をもつN2爆薬を掘削孔に投じる役が草ナギ剛演じる深海潜水艇パイロットだ。主人公は最初は国外退避を考え、やれることを何もしていなかったが、最終的に「守りたい人」のために生きて戻れない使命を果たしたいと自ら申し出る。
草ナギの演技は何を考えているのかわからない能面のようで、私にはその内面の変化が理解できなかった。一緒に映画をみた戦中派の母(草ナギファンだ)は「彼はどうしていつまでもうろうろしていたのかしらねー」。
と、劇場用パンフレットに監督の次の言葉をみつけた。「さまよってさまよって、最後は何かを助けるために行動するような人間に変わっていく話にしたかった」。しかも、最初は主人公はもっと行動的な性格だったのが、撮影中にかわっていったという。さまよう主人公のほうが時代としっくりあったということか。
主人公の最後の台詞が「奇跡は起きます。起こしてみせます!」。特攻隊員の台詞のようだなー。この台詞も時代の空気を反映しているのか?(評論家・井口優子)
ナギ=弓へんに剪