【書評】「生命科学者 中村桂子」 大橋由香子著 決断力と実行力のある女性
2004/03/13, 産経新聞 東京朝刊
シリーズ「こんな生きかたがしたい」に登場した女性たちは、『医師・登山家 今井通子』『マンガ家 里中満智子』『フォトジャーナリスト 吉田ルイ子』『国際ボランティア 星野昌子』ほか多彩である。そして今回は『生命科学者 中村桂子』さん。
この企画は、アメリカの女性たちが、十代の後輩たちの未来を築くお手伝いをしようとするさまざまなボランティア活動を私に思いださせた。二〇〇四年のアメリカとて、女性たちの生きかたや活動を制約せんと頭をおさえつける目にみえない「ガラスの天井」が存在する。そこでひるまず、共闘し、そして後輩たちへの啓蒙活動も行う。さすが女性の権利も自らもぎとったアメリカである。
アメリカ仕込みのボランティアが盛んになった日本だが、女の子たちへの啓蒙活動は、と見回したとき、この本を手にした。
DNAの二重らせん構造の美しさと出合って研究者の世界に。大学の同級生と結婚、妊娠。研究と家庭の両立、研究者への適性に悩み、職を辞す。恩師の理解と助力を得て、翻訳などの仕事をしながら子育てに力を注ぎ、科学を生活者の目から見直すという意味ある時間を得て五年。生命科学というまったく新しい概念の研究所設立を手伝えとの誘いを受けて、新しい世界へと帆を張る。
自分の欲しい物を闘って手にしたアメリカ女性(例えば、民主党副大統領候補に名があがっているヒラリー・ロダム・クリントンさんら)と比べると、当初の読後感は、正直物足りなかった。が、何度か読み直すうちに、最初は読みとばした「『ここぞ』という時は自分で決断して実行する強さを持つ」という一文が徐々に光を放ちはじめ、一見たおやかだが、その実どっこい逞しく生きる日本女性的強さと迫力がじわっじわっと伝わってきた。(理論社・一五〇〇円)
評論家 井口優子