【from】井口優子 リーダーの楽観主義
2003/10/05, 産経新聞 東京朝刊
イラクの戦後がもたついている。世界の警察を任じ、アメリカの価値がメソポタミア文明発祥の地の国の価値にもなりえるという青写真は、現在のところ明らかに予定どおりには進んでいない。
アメリカより歴史があり、価値観も違い、現人神のために国民が命を捧げた国でも、アメリカの価値を浸透させることができた-とアメリカに思わせたのは日本である。と、イラクと日本の違いは何であろうと指を折ってみたりする。
このような事態になると、穏健派パウエル国務長官の出番であろう。ふと、本棚からこの春買い求めた「パウエル リーダーシップの法則」(オーレン・ハラーリ著、KKベストセラーズ)を取り出した。「楽観主義はパワーを生む」という章が気になった。
本によると、パウエル氏は楽観主義という偉大なリーダーの資質を備えているのだそうだ。周到な計画をたてて準備をし、いざ具体的な決断と行動をするとき、大いなる目標達成のための創造力を吹き込むのは楽観主義である、と。ペンシルベニア大の心理学教授、マーティン・セリグマンによると「何もコントロールできないと思っている人間は、文字どおり無力になる。身をもって無力を体験すると、何に対しても受け身になり悲観的になる。一方楽観主義者は大切なのは自分の行動と思い、だからこそ自分の成功と失敗に責任をもつ」のだそうだ。
レーガン元大統領がこの数十年でもっとも楽観的な公人であったとも書かれている。どんな人物に出会っても、どんな状況におかれても必ず前向きな側面を探し出し、周囲を驚かせたとか。そういえば、日系アメリカ人の友人が、「ベトナム戦争で失った自信と誇りをアメリカ人に取り戻させたのは、レーガンだった」と言っていた。
「(日本の)戦後は終わった」とはとうの昔に言われた言葉だが、意識の上で戦後を断ち切るには、現代の日本にも真の意味での楽観的リーダーが必要なのだろう。(いぐち・ゆうこ=国際ジャーナリスト)