【from】井口優子(いぐち・ゆうこ=国際ジャーナリスト)
2003/03/21, 産経新聞 東京朝刊
◆本当のブッシュ大統領
先月、東京にある国際大学グローコムでの「国際情報発信」月例セミナーでスピーチする機会を得た。「顔が見えない」といわれる日本をもっと世界に理解してもらうべく、主に英語で情報発信しようと、このセミナーは始まった。出席者の多くは海外在住経験者である。
私がアメリカでてがけた取材と、私生活で触れたアメリカ人を通して現れる日本の「イメージ」について語ってみようと試みた。
逆も真と、日本に入ってくる「アメリカ」もイメージが先行して実態とは違うことが多々ある、と最後に一言加えると、出席者の一人、小浜正幸氏がわが意を得たとばかりにうなずくのが見えた。
現在コンサルタント会社を経営する氏は、日立製作所勤務時代、ニューヨーク、レバノンなど、約二十年を海外駐在員として過ごした。テキサス州知事であったブッシュ大統領にも五度ほど会っている。氏が憂えるのは「ブッシュ大統領は戦争好き」というイメージが日本で一人歩きしていることだそうだ。日米関係の会合でも、ブッシュ大統領の人間性をよく知らない人が、訳知り顔で大統領を全面否定するのを見て、日本の国益からみると非常に危険だと言う。
実際、ブッシュ大統領個人は戦争を忌み嫌い、人懐っこい、一度会うとすっかり好きになってしまう人間的魅力をもっているのだそうだ。そういうブッシュ氏が大統領になって、アメリカの国益のためにどう決断していくかを日本人に伝えたいと、「ブッシュはこう動く」という本に仕上げ、近ごろ出版した(毎日新聞社刊)。
アメリカ人は個人レベルでも自分の利益を侵害されると、「ナイスなアメリカ人」から「戦闘的なアメリカ人」に豹変(ひょうへん)する。アメリカ人一人一人が(国民性としての意味で)、普段の生活でも自分の利益を守るために戦う交渉能力と覚悟を持っていて、その集合体がアメリカと言う世界一の超大国であり、その代表が大統領であることを、小浜氏の話を聞いていて再認識した。